【書評】不倫小説の代表作『ボヴァリー夫人』を読んでみた

 

ボヴァリー夫人 (新潮文庫)

ボヴァリー夫人 (新潮文庫)

 

 

フランス文学の傑作であるギュスターヴ・フローベールの『ボヴァリー夫人』の書評を行っていきたいと思います。『ボヴァリー夫人』は実際にあった地方の姦通物語を題材にした作品です。『ボヴァリー夫人』は不倫小説です。雑誌に掲載されていた当時は、公序良俗に反しているとして裁判沙汰にもなった問題作だったみたいですが、裁判沙汰になったことの話題性もあってか爆発的に売れたらしいです。

精緻な情景描写が特徴的で、当時は小説の技法的な意味でも革命的な作品として、フランス文学の代表作になりました。『ボヴァリー夫人』はありのままの現実をそのまま描写しようとする「写実主義」の金字塔として有名です。実際にフローベールは1つの場面を書くのにも4か月もの歳月をかけていたらしく、そのエピソードだけでも並々ならぬ拘りを感じます。

 

では、簡単にあらすじから書いていきたいと思います。小説の背表紙のあらすじに結末まで書いてあるくらいなので、普通にネタバレしていく方向で進めていきます。

 

ダメダメ夫婦の物語
 
エンマ(=ボヴァリー夫人)は簡単に言えば、夢見る人妻。少女時代から恋愛小説を読み漁り、白馬の王子さまに憧れたまま大人になってしまったような人といえば分かりやすいかもしれない。小説の序盤には、田舎の医者のシャルル・ボヴァリーと結婚しているものの、刺激のない新婚生活に耐えられず妄想ばかりしている。
シャルル・ボヴァリーは、お人よしなんだけど男らしいところのない唐変木。元々、シャルル・ボヴァリーにはエンマと結婚する前に、死別した妻がいたのであるが、その死別した第一のボヴァリー夫人という人も母親に選んでもらった女性だった。
エンマは情けない夫を軽蔑し、憎むようになってしまい精神を病むようになってしまう。シャルルはそんな妻を見かねて引っ越しすることにするが、引っ越し先で遊び人の田舎貴族ロドルフと青年書記のレオンに出会う。エンマは二人の男に身を焦がすような恋をするが、その際に莫大な借金をしてしまう。妻を溺愛しているシャルルは、エンマの不倫のための口実にも疑うことは一切ない。
結局、人生への絶望と借金に追い詰められたエンマは服毒自殺をしてしまうのであった。

 

 
 
『ボヴァリー夫人』の映画版もいくつかあるので、予告版見てもらったら雰囲気を掴めるかも。割と最近の映画『ボヴァリー夫人とパン屋』はまだ見ていないので、気になります。
 
 
 実際に読んでみて・・・
 
ベルトという自分の娘がいながら、不倫と借金を繰り返してしまうエンマは人として屑なんですけど、理想と現実の間で苦悩するエンマの気持ちには共感してしまいました。
だがどうやってここから抜け出せるだろう?やがて、彼女はこのような幸福にひそむ卑しさに屈辱を感じたものの、どうしようもなく、習慣からか退廃からか、そこに執着し、そして、日増しにいっそう夢中になり、幸福を過大に欲するあまり、かえっていかなる幸福をも涸らせてしまった。
この小説、不倫シーンの場面も強烈なので、ガツンと印象に残りました。ロドルフと森で洒落込むところやレオンと馬車に乗り込むシーン、今わの際のエンマのシーンは結構生々しかったです。こういう不倫小説を読むと、本って毒だなと思いますね。
 
エンマのように情熱に身を任せて生きることが悪いことなのかどうかは現代に通じる永遠のテーマだと思います。
長編で精読を必要としますが、間違いなく傑作なのでご一読をお勧めします。