【簡単に書評】伝説のジャンキー ウィリアム・バロウズの『裸のランチ』を読んだ【おすすめ度★★☆☆☆】
伝説の怪作
今回、紹介するのはウィリアム・バロウズの代表作『裸のランチ』。
おすすめ度を低めにしているのは、単純に物語的な面白さはないからです。
話自体には筋がないし、イメージが頭の中に流れ込んでくるばかりで、何が書いてあるのか全く分からない。とにかく文脈なんてあったもんじゃなくて、ぐちゃぐちゃ。イメージの爆音みたいな。
そもそも、著者のウィリアム・バロウズも自分が何を書いたのか理解できないのだから、読者に理解のしようがないのです。
例をあげてみましょう。
ベンウェイ医師は自由恋愛と頻繁な水浴をする者たちに与えられた地域ーフリーランド共和国の顧問として招かれていた。ここの住民たちは順応性に富み、協力的で、正直かつ寛大、とりわけきれい好きだ。しかし、ベンウェイが呼び寄せられたということは、表面的は衛生的に見えるが内部ではすべてが良好というわけではないということを暗示している。ベンウェイは記号系の操作・調整者で、尋問、洗脳、統制などのあらゆる面に精通している。おれはベンウェイが併合国を急に立ち去ったとき以来、彼にはあっていない。あそこでの彼の任務はT・Dー完全道徳頽廃ーだった。ベンウェイが最初に行なったのは、収容所や集団逮捕を廃止し、限られた特別の場合を除いては、拷問の採用をやめることだった。
河出出版 ウィリアム・バロウズ「裸のランチ」P46
ずっとこんな調子です笑。
広告BANされちゃうようなワードもたくさん出てきます。
実はこの本は「カット・アップ」という新しい技法で組み立てあげられた実験小説なんです。「カット・アップ」とは、新聞や自分の打ち込んだ文章を一度バラバラにして、それらのパーツを組み合わせることによって文章にする技術なんです。
いわば、文章のコラージュです。
これによって、普通の文章を、全く意味の違う文章にしたり、新しいフレーズを見出すことができます。
「カット・アップ」という技法を発明したという意味から、「裸のランチ」は文学史に残る評価されているとも言えます。
うーん。まあ、でも、オカルトとかアングラ好きな人なら一度は読んでみたらいいんじゃない?と薦めるレベルですかね。この本はとにかく人を選びます。
端的に感想を言えば、悪夢を読んでいる感じです。
エキセントリックなものが好きな人にとっては、時々読み返したくなる代物かもしれません。
・・・ぼくは当分、読まなくてもいいかな。けっこう読むのも疲れるし。
奇人ウィリアム・バロウズ
『裸のランチ』よりも著者のウィリアム・バロウズのエピソードの方が
目を引くかも知れません。なんせ、とんでもない男だからです。
バロウズはハーバード大卒の経歴を持つにも関わらず、同性愛の男に振られて小指を詰めたり、麻薬売買人の道に進んだり、筋金入りのジャンキーだったりと、とにかくすごい。
極め付けは、ウィリアム・テルごっこ(頭の上に置いたりんごを銃で撃ち落とす)をやっていたところ、ぐでんぐでんに酔っ払ったバロウズは誤って妻を射殺。もちろん、逮捕。
・・・ここまでいくと、単純にカリスマを感じますよね。
実際、バロウズは一時代を築きあげた人物です。
アメリカでは『裸のランチ』は教養書なんだとか。
もし気になったら、『裸のランチ』を読んでみるのもありかも・・・?