【読書感想】 嫌われる勇気 岸見一郎・古賀志健

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昨今話題の自己啓発本の感想を書こうと思います。

そもそも書評みたいなことをはじめたのは、本をおすすめするためではありますが、アウトプットすることで自分なりに読んだ本の理解を深める目的もあります。自己啓発本はそんなに読む訳ではないのですが、『嫌われる勇気』は衝撃的な内容であり、自分の足りない部分に気づかされた内容でしたので、きちんと自分の中で整理したいと思いました。

 

 

 

そもそも、『嫌われる勇気』はアルフレッド・アドラーの提唱した心理学理論を、哲人と青年の対話形式で理解しやすいよう

にまとめられた本です。

アドラーは、フロイトやユングのような著名な心理学者と同列に語られる、心理学界の巨頭です。

 

ちなみに、自分は『嫌われる勇気』が世間的に大ヒットするまで、アドラーの名前さえ知りませんでした。

『嫌われる勇気』は、アドラー心理学とは一体どのようなものなのかということを知るには、最適の一冊だと思います。

僕もこの本に巡り合い、アドラーの考えを知ることができて、本当に良かったと感じます。

 

 

アドラー心理学の大きなテーマは

「他人に支配されず、いかに自分の人生をよりよく生きるか」

 

ということです。

心理学という名前こそついておりますがアドラー心理学とは、幸福になるための気持ちの持ちよう

について研究したものです。

この本にでてくる哲人も冒頭で「誰しも幸福になれる」と断言しています。

 

そんなアドラーの考え方のポイントを簡単に分けると

 

①トラウマの否定

 

②人間関係こそがすべての悩みの根源

 

③共同体感覚を持つこと

 

の3つに分けられます。

 

では、どういうことかを簡単に趣旨だけでも書いておこうと思います。

 

 

 

①トラウマの否定

アドラー心理学では、フロイトのいうような「トラウマ」の存在を否定します。

ひきこもりの例が、この本では分かりやすく挙げられています。

トラウマの考え方によると、ひきこもりは、外にでることが不安だから外に出られないということになります。

一方、アドラー心理学は逆で、外に出たくないから、不安を作り出すという考え方をします。

ひきこもりは、例えば、ずっと家に引きこもっていれば親が心配してくれる、外に出ることで他人より見劣りすることもなく家にいれば特別扱いされるという目的があるから、ひきこもるという考え方をするのです。

驚くべき考え方をしますよね。

かなり厳しい考え方です。

 

 

大声を出して怒るという場合も同じで、大声を出したいから怒ると考えます。実生活を送っていると、思い当たることもあるかも知れません。自分もストレスを抱え混んでいる人ほど、大声で怒り狂うと感じることがあります。

 

 

 

アドラー心理学では、人はなにかしらの目的に従って行動するという目的論で人間の行動を解釈します。

過去の経験から自分の目的に沿ったものによって、経験を意味付けして自らを決定すると考えるために、~というトラウマからこうなってしまったという原因論的な考えを否定するのです。

厳しい考え方ではありますが、~だからと原因ばかりに目を向けてしまうトラウマとは違い、

変わろうと思えば人は変わることができるとするのがアドラーの考えの素晴らしいところです。

変われないのではなく、変わらないという決断をしているに過ぎないのです。

「これまでの人生に何があったとしても、今後の人生を生きるかについてなんの影響もない」

とポジティブに考えることができます。

元気が湧いてこないですか?

幸せになる勇気さえ持てば、人間はいつでも変わることができるのです!

 

 

 

②人間関係こそがすべての悩みの根源<

アドラーは、「人間の悩みは、すべて対人関係の悩み」とはっきりと断言しています。

「悩みを消し去るには、宇宙のなかにただ一人で生きるしかない」とさえ言っています。

極論じみてはいますが、確かに考えてみるとその通りかも知れませんね。

他者がいなければ、そもそも孤独もかんじることはありません。

自分にとって、一番この本を読んで印象深かったのはアドラーは「承認欲求の否定」をしている

いうことです。

このあたりは、タイトルの「嫌われる勇気」と結びついてくる話です。

 

他人の期待に応えるために我々は生きているのではなく、他人の評価や期待ばかりに気をとられている人生は「他者の人生を生

きる」ということになってしまいます。

逆にいえば、「他者は自分の期待を満たすために生きているわけではない」ということで、人が自分のために動いてくれなくて

も怒ってはいけないのです。

 

ここで大切になるのが「課題の分離」という考え方です。

 

対人関係のほとんどは、他者の課題に土足で踏み込むこと、自分の課題に土足で踏み込まれることによって引き起こされるま

す。

自分の課題なのか他者の課題なのか 課題を分類分けする「課題の分離」を行い、他者の課題には土足で踏み込まないことが

対人関係を円滑にするうえで大切になります。

また、この本で挙げられている例を借りますが、勉強しない子どもと親の関係が一番分かりやすいです。

勉強しなければならないのは子どもの課題です。

なぜなら、勉強しないことを選択することでもたらされる結果を引き受けるのは子どもだからです。

子どもが勉強していい大学へ行き良い就職をするのも、勉強する代わりにバンドを組み、世で流行りのバンドマンになるのも

その子どもの人生です。

だからといって、親の放任主義を認めている訳では全くなく、子どもが困ったとき、相談したいとき、いつでも援助できるように、見守ることは親としての役割であると思います。

 

他者の期待に応えようと行動する時、その行動の見返りを密かに期待します。他者の人生に介入し、見返りを求めること

は自分勝手な生き方なのです。

人生は株主総会ではないのです。

 

 

アドラー心理学は、自分の信じる最善の道を選ぶことを推奨します。

その選択について、他人が

どう評価しようと他人の課題であって、自分ではどうしようもないことなのです。

ここで、この本は自由をこう結論づけています。

 

「自由とは、他者から嫌われることである」

嫌われるのは怖いと思ってしまいますけど、「課題の分離」という考え方は是非とも身に付けたいものです。

生きるの楽になりそうですもん。

 

 

 

③共同体感覚を持つこと

アドラーの考えでは、「課題の分離」を行うのは、対人関係の入り口と書いています。

共同体感覚とは、「他者を仲間だとみなし、そこに自分の居場所がある」と感じられることで

す。

共同体感覚を持つためには、自己への執着を他者への関心に切り替えていくことが必要です。

自己への執着を捨てられない人は「他者からどう見られるか」ばかりを気にして「わたし」にしか興味を示さない、自己中心的な人物であるとさえこの本では書いています。

アドラー心理学は辛辣ですね。

アドラーの考えでは、他者貢献の必要性を説いていますが、

この本では「幸せとは貢献感」

と言い切ってしまっています。

自分は役に立っているという自己満足こそ幸せにつながります。

ここで注意するべきなのは、目に見える貢献でなくても、主観的な貢献感さえあればいいのです。

承認欲求による他者貢献も必要ありません。承認欲求を通して得られる貢献には自由がないのです。

 

 

 

ここまで長々と書評をしてきましたが、本当に変わりたいと望む人は、こんなもの読んでいるよりも実際に『嫌われる勇気』を

読むべきだと思います。

実際に、アドラーの考えを実践するのは難しいですが、少しずつでも自分を変えていけたらと思います。