【雑記】CIAの旦那が作るラーメンは美味い

つい先日、恐るべき発見をしてしまった。

行きつけのラーメン屋の大将がCIAのエージェントだったのである。

 

経堂にある、そのラーメン屋はくさみのない豚骨ラーメンを食わせる店で、大学生の頃からの行きつけの店だ。最近は経堂に立ち寄ることもないので、ご無沙汰だったのだが、なんだか唐突にラーメンが食いたくなった。それで、人の多いランチ時を避けて、客入りの少ないであろう夕暮れ時に、わざわざ電車で経堂に向かったわけだ。

ぼくの読みは当たり、夕方のラーメン屋は、ブレイクタイムの雰囲気で、常連客らしき太ったおっさんと、頭に鉢巻を巻いた剛健の店主の二人しかいなかった。

このおっさんがCIAのエージェントだったということも知らずに・・・。

 

大将はおっさんの客相手に外交問題に花を咲かせていた。客の入りも少なくなり、大将もついリラックスしすぎたのであろう。

ホムルズ海峡におけるイランのタンカー攻撃事件について、講釈を垂れていたのである。

 

大将曰く、「タンカーを攻撃させたのはアメリカの差し金に決まっとる。あの騒動はアメリカの自作自演だってことがなんだって分からないのだ。政治家連中は節穴なのか。馬鹿なのか。誰がどう見たってアメリカがイランに攻撃させたに決まってるだろう」

 

その話題への熱量たるや。舌の脂を燃やし、口から火を吹くようにまくし立てていた。

さぞ思い入れも深いのであろう。

 

それにしても不思議である。なぜタンカーを攻撃させたのがアメリカの差し金であることを、この店主は知っているのであろう・・・。ちなみにぼくはこの手の話題にすこぶる弱い。それゆえに非常に気になったのである。

なぜ一国民であるラーメン屋の店主が、実際に外交問題に対峙している政治家以上に国際事情に詳しく、ここまでの確信を持って断言できるのか。

 

閃いてしまった。

このラーメン屋の店主、CIAのエージェントに違いない。

そうでなければ、アメリカの裏事情に知悉しているはずがないのだ。

なんらかの事情で日本をスパイしにきている傍で、ラーメン屋の店主を務めているのだ。ついついリラックスしすぎて、饒舌になってしまったに違いない。

タイムリープ系のゲームのシナリオでも、主人公の住居の下で店を構える中古テレビ屋が実はエージェントだったという展開があったはずだ。

 

これはまずい。

ラーメン屋の店主の正体に気が付いてしまったそぶりを見せないようにしなくては・・・。下手すると、殺されるかも知れない。ぼくみたいな雑魚は鶏ガラのように、その豪腕に持ち上げられて、巨大な寸胴鍋に突っ込まれてダシにされてしまうかも知れない。

 

緊張の面持ちで何気ない風を装っていると、

CIAの旦那は「はい、豚骨ラーメン。一丁!」

とぼくの座った前にズドンとラーメンどんぶりを置いた。

 

この瞬間、ぼくは4000年ほど寿命が縮んだ心持ちがした。

だけど、久しぶりに啜ったラーメンがとても美味かったので、4000年若返った。

CIAの旦那が作るラーメンは美味い。

 

世間には、裏の政情に妙に詳しい人も多い気がする。

CIAの旦那だったり、中国共産党の回し者だったり、KGBの手先だったり。

そういう人たちからは、なるべく遠ざかって、小さく丸く生きていこうと思う。

 

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