【ロックダウン体験記】ニュージーランドの約一ヶ月半ものロックダウン生活について書いてみる【NZワーホリ】

新型コロナウイルス、世界中で大暴れ

新型コロナウイルスがここまで大暴れするとは想像してなかった。

今や新型コロナウイルスと無関係でいられる人は世界のどこに行ってもいないのではないと思う。無論、ニュージーランドも例外ではなく、連日のニュースで新型コロナウイルスの新規感染者数で一喜一憂していたり、感染状況と経済ダメージのバランスをうまく取ろうとしている。

今、自分はワーキングホリデーでニュージーランドにきているが、たまたまロックダウンというものを経験した。

これもいい機会だと思うから、一個人の経験としての海外でのロックダウンを書いてみることにした。とはいえ、ここには言説を補強するようなものは書かれていないし、ニュージーランドに在住する人たち(キウイと呼ばれる)の共通の感覚を書くことはできない。ぼくはたまたまニュージーランドにいるだけの日本人で、住んでいるわけではないからだ。新型コロナウイルスで、ニュージーランド在住者とワーホリの持つ不安はまた違う。

だから、あくまで主観的な目線で書こうと思う。ただ暇つぶしとして読んでもらえればいい。

 

1月の最初は余裕こいてた

2020年1月の時点では、コロナパニックはまだ中国国内で留まっていたはずだ。

ぼくはロトルアという街の近くのブルーベリーファームでピッキングの仕事をしていたが、「新型コロナウイルスがニュージーランドまで来たら人類滅亡w」くらいに考えていた。

というのも、ニュージーランドは人が少ない。漠々たる大地が続いている。こんなところでウイルスに感染するのはちょっと考えられない。

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関係ない話だなあと思っていたら、1月末に新型コロナウイルスの症例がオークランドで確認されていたらしい。

 

オークランドで嫌味を言われる

2月にはブルーベリーの仕事を辞めて、2週間ほどオークランドに滞在した。

この頃には、ニュージーランドでもコロナウイルスの脅威を感じはじめてきている人が目立つようになっていた。

オークランドに向かう前日にロトルアで銀行からお金を引き出していたら、おばちゃんから「あんた、どこから来た?」と言われる。日本だと言うと、「terrible」と顔をしかめられた。この時点では日本はまだ新型コロナの感染はさほど広がっていなかったように思うが、アジア人ではない人からすると、日本人も中国人も韓国人も大した変わりはないと思っているらしい。「2ヶ月前からロトルアにいるから大丈夫だと思う」と言ったら、ようやく安心したみたいだった。

 

オークランドではかなり嫌がらせを受けた。

街中を歩いていると、突然「お前どこから来た?」と言われる。日常的に窮屈を感じている連中はここぞとばかりにデカい顔をする。それはニュージーランドでも一緒だった。「日本」と答えると、鼻で嘲笑って、去っていく。正面切って相手をバカにするような嘲笑いは日本人にはなかなかできない。俺にもこんな顔ができたら、ちょっと人をバカにするときなんか便利だろうなと羨ましく思う。

バックパッカーズでは、お前日本人だからと、相部屋にいた奴に、けっこうガチなマスクを渡された。「俺、ロトルアに二ヶ月いたから大丈夫だと思う」と言っても苦笑いされる。あまりにムカついたので、真夜中にマスクを窓から放り投げたが、今考えればもったいないことをした。たぶんいいマスクだっただろうから、転売すれば良かった。

 

2月になると、少なくともオークランドではルサンチマンを抱え込んでいる奴らがここぞとばかりに威勢がよくなった。あまりにコロナ、コロナと言われるので、「俺がコロナだったら、お前の前でため息ついてやるぜ」とでも言い返そうか考えた。コロナだなんだとバカにしてくる奴は、自分が新型コロナにかかることはないとたかを括っているのだ。結局、鬱憤は子どもじみた妄想のなかで満足させた。

 

そんなわけで、個人的にはオークランドはニュージーランドのなかでは、そんなにいい場所だとは思っていない。確かに都市にしては自然が豊富だし、いつになっても終わる気配のない道路工事を別にすれば、落ちているゴミも少なくてかなりクリーンだ。嫌な人間だらけなわけじゃない。親切な人もいる。

だが、2月の終わりに南島のカイコウラ、クライストチャーチ、ダニーデンに旅行に行ったときは気分を害することはなかった。

 

あれよあれよという間にロックダウン

3月には、北島のテプケという街で、キウイフルーツのパッキングの仕事をはじめていた。キウイフルーツをつめるための箱を組み立てるという、超単純作業だ。はっきり言って、つまらない仕事だが、まとめた時間で働くことができるので金が貯められる。

ぼくは呑気だったが、3月から状況が急転した。

 

3月の後半に、ニュージーランドでも新型コロナウイルスの感染者数が急増。

3月21日に新型コロナウイルスの警戒レベルが導入され、警戒レベル2に移行。

3月23日に感染者数が100人を超え、レベル3に移行。2日後にレベル4(ロックダウン)開始が予告される。この時点で、ロックダウンは1ヶ月行うことも確定した。

 

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COVID-19のalert levelの詳細も一枚の画像にまとめられている



 

3月18日にニュージーランド政府の新型コロナウイルス対策ホームページ(https://covid19.govt.nz/alert-system/covid-19-alert-system/)が立ち上がったことを考えれば、凄まじいスピードで意思決定がなされたことが分かると思う。

なんせ、23日の時点でロックダウンが確定。驚く間もなく、26日にはロックダウン開始。たった二日で飛行機や長距離バスなどの交通機関、必要不可欠なビジネス以外の事業は休止するになったのだから、状況にどう対応したらいいか頭が追いつかない人が多かった。

ぼくの知る日本人のワーホリも半分くらいは、このタイミングで帰国した。金銭的に滞在に費やせる余裕がなかったり、NZ国内唯一の移動手段と言ってもいい車を持っていなかったら確かに帰るという選択肢を取ることになるかも知れない。車がないと、スーパーにもいけないのだ。ロックダウン中に、ヒッチハイクしたり誰かの車に乗せてもらったりはできないだろう。レストランジョブをしていた人なんかは、いきなりクビになったと言っていた。

 

その点、ぼくは気楽なものだ。

ロックダウンがはじまったら海にも行けないことを知り、ロックダウンが決まった時点で潮干狩りに行っていたんだから。

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ロックダウンとはいえ、さほど生活は変わらない

ロックダウンがはじまっても、ぼくの生活はほとんど変わらなかった。

キウイフルーツのパッキングの仕事はエッセンシャルワークだった。ニュージーランドは酪農国ゆえにキウイフルーツの輸出ができなくなると経済的にまずいのだ。せっかく収穫したキウイフルーツも腐ってしまう。

だから、変わったことと言えば、仕事の休みの日に釣りに行けないことくらいだった。

職場とホームステイ先の家、スーパーを行き来する生活にほとんど支障はない。

 

もちろん、職場ではソーシャルディスタンスとして2m離れることが徹底される。

朝に検温をしてから、手を洗い、大急ぎで作られたプラスチックの仕切りに挟まれて作業をする。家に帰ったら、すぐにシャワーを浴びる。

スーパーマーケットは、1日1ファミリーにつき1人だけが入場できる。

生活習慣で変わったのはそれくらいだと思う。

仕事が忙しすぎて、むしろロックダウンのストレスはまったくなかった。

それにホストファミリーの家は農場である。外に出たかったら、敷地内を散歩して、牛と戯れることも、ドローンを飛ばして遊ぶこともできた。

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何よりも、ぼくは引きこもり体質である。ロックダウンとは相性がいい。

 

ニュージーランドのロックダウンでは、外出した違反者には罰金が科されることはあったが、いわゆる「自粛警察」たちはいなかった。

ニュージーランド政府のやり方が明確で分かりやすいものだったからだと思う。

アーダーン首相はロックダウンに際し、同一世帯に一緒に住む人たちを「バブル(泡)」という言葉に置き換えた。バブルのなかに感染者が出てきたとしても、ウイルスはバブルの中に留まり、他のバブルには移らない。バブルは壊れやすいから、バブルを壊さないように行動しようというわけだ。

 

ニュージーランド警察もユーモアがあった。

「史上で初めて、テレビを見ているだけで世界を救えるんだから、しくじるんじゃねえぞ」というメッセージ。

 

どっかの国の政府のゴタゴタにストレスを貯めていたから、感心してしまった。

 

ニュージーランドは対応が早かった

今、現在警戒レベルはレベル3まで下がっている。

レベル3になるやいなや、皆、マクドナルドやケンタッキーのドライブスルーに駆け込んでいた。世界のなかでも、高い肥満率を誇るだけのことはある。もっと美味いもんあるだろ。

www.nzherald.co.nz

 

あと、3日後の14日にはレベル2まで下がる。レストラン、カフェ、床屋などがようやく営業再開になる。またロックダウンになる可能性は残っているものの、今はとりあえず状況が落ち着いてきている。

 

5月12日現在、ニュージーランドは、感染者の累計が1,497人。回復した症例数が1,398人。死者数21人。

人口や風土の違いはあるので、他国のやり方とは単純な比較はできないものの、新型コロナウイルスをかなり封じ込めることができていると思う。

このまま順調に良くなって欲しいと思う。